年2,900円の昇給は多い?少ない?昇給を実現する2つの交渉術


今の職場で昇給を経験したことはありますか? 入社当初は昇給が年に1度もしくは2度あると聞いていたのに、実際入社してから一度も昇給したことがないという人もいると思います。雇用条件を見て入社を決めたのに昇給しないなんておかしいですよね。でも、最近はそういう企業も多いようです。そこで今回は、昇給を実現させる交渉術をご紹介したいと思います。

そもそも昇給とは?みんなはどのくらいもらっている?

まずは、昇給についておさらいしておきましょう。昇給とは、毎月の給与がアップすることを言い、ボーナスは含まれません。実は昇給には2つの種類があります。

業績の改善やインフレ、経済状況の変化などの関係で、年次や勤続年数に関係なくベースの給与をアップさせることを「ベースアップ」と言います。よく春闘のニュースで聞かれる言葉ですよね。基本的には景気がよくて物価が上がり始めたときに「ベースアップ」が求められることが多いです。

一方で、定期昇給という制度があります。これは年次や勤続年数などによって、毎年自動的に給与が上がる仕組みです。求人広告の募集要項に、「昇給 年1回(4月)」などと書かれているのがこれにあたります。

外資系企業は成果主義のため、こうした年次や勤続年数で定期的に給与が上がる仕組みがないところがほとんどです。日本企業は終身雇用制度の名残で定期昇給を実施しているところが多いですが、最近はベンチャー企業やIT企業を中心にせいか主義を採用するところが増えてきているので、近い将来、定期昇給がなくなる可能性も大いにあります。

では、昇給って、いくらくらい給与が上がるものなのでしょうか。

大手転職サイト「リクナビNEXT」の調査によると、中小企業の昇給率は平均1.45%と言われています。1年後に、月収20万円なら2,900円、25万円なら3,625円、30万円の人なら4,350ほど昇給する見込みがあるということですね。

これが10年続くとどうでしょうか。月給30万円で毎年1.45%昇給があった場合、単純計算で346000円まで給料が上がります。10年で月収が4万円、年収だと約64万円(年4か月分ボーナスありと仮定)上がるのですが、これは喜ぶべきことなのでしょうか。それとも、思った以上に上がらないなと思いますか。

加えて、景気が良ければベースアップがあるかもしれませんし、ボーナスも出るかもしれないことを考えると、年収は上がる可能性はほかにもあります。逆に、平均と言われる1.45%を下回る企業もあるので一概には言えませんが、30万円から346000円で約120%増が見込めるということになります。

一方、大企業の昇給率はどうでしょうか。同じく大手転職サイト「リクナビNEXT」によると、大企業の場合、昇給率は「2.59%となっています。ここでも、月給30万円で年1回昇給があった場合、10年後にどのくらい増えているのかを計算してみました。すると、10年後には387000円ほどまで給与がアップしています。10年間働くと、月収で約87000円、年収にして139万円(年4か月分ボーナスありと仮定)ほどアップすることになります。こうしてみてみると、インパクトも大きく感じますよね。

参考: リクナビネクストジャーナル:【これって多いの?少ないの?】気になる昇給の平均額について調べてみた

では、成長著しいアジアの国々の昇給率はどうでしょうか。ウイリス・タワーズワトソンによる昇給率調査によると、アジア太平洋地域の平均昇給率は前年比+1.2となっており、ゆるやかではあるものの回復が見込まれているとのことです。

平均昇給率は2017年で5.9%2018年予想では6.1%となっています。日本の大企業と比べて2倍以上の数字になっていますね。中長期的に経済が減退期を迎えているのではと心配されている中国も、2018年の予測は7%台になっています。

一方で、香港、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどのいわゆる先進国は、低水準で推移すると思われています。インフレを考慮した実質昇給率は、オーストラリア・ニュージーランドで1.1%、香港1.7%、シンガポールで2.4となっており、やはり先進国は低い昇給率となっているようですね。

いつまで経っても昇給しない理由とは

それでは、自分自身の昇給の話に戻りましょう。昇給しない会社は、なぜ昇給させてくれないのでしょうか。考えられる理由としては、単純に会社の業績が悪いということ。昇給はそもそも、法律で決められているわけではありません。

就業規則に記載がある場合も、おそらく但し書きがあって「やむを得ない理由があるときは昇給させることができなくてもいい」という趣旨のことが書いてあるはずです。会社の業績が悪いというのは、やむを得ない理由ですよね。業績が悪いのに、それまで以上に昇給させるのは難しいはずです。

ですから、昇給がないからと言って企業が法的な責任に問われるわけではなく、業績が悪いときや景気が悪いとき、また業績の先行きが怪しいときには昇給しないという決断もありえるわけなんですよね。そうなると、労働者としてはなかなか昇給を主張しづらい状況にはなってしまいます。

昇給制度があるのに昇給しない2つの理由

とはいえ、昇給制度がきちんとあるのに昇給しないなんておかしいじゃないか!と思う人も多いと思います。その理由は大きく二つあります。先ほど、法律では昇給に関する決まりがないとお伝えしましたが、それでは何で昇給制度が定められているかというと就業規則なんですよね。

就業規則というのは、働く人と雇う人が労働に際してお互いに守らなければならない事項が定められているものです。そしてその就業規則は、労働契約法によって縛りがあります。労働者の不利益となるような労働規則の変更には、働く人と雇う企業の双方向的な合意が必要なのです。

たとえば「給料を下げたい」と雇う企業が言っても、なかなか労働者は首を縦に振らないわけです。そうなると、基本的には給料は一度上げたら下げることはほぼ不可能で、その人をずっとその給与以上の水準で雇い続けなければならないということなんですよね。これは、企業側にしてみるとかかなりリスキーな行為です。

業績が悪化するかもしれないし、リーマンショックのような大きな不況が訪れるかもしれない。でも、給与は下げられない。こうなると、給与を上げるのもかなり勇気がいるものですよね。これが昇給制度があっても昇給しない一つの大きな理由です。

もう一つは、昇給に上限を定めている企業が多いということです。この役職で昇給できるのはここまで、というような決まりがあるんですよね。すべての企業にあるとは言えませんが、多くの企業がこうしたしくみを持っています。上限に達すると、その役職でいる限りはなかなかそれ以上の昇給が見込めないのです。

昇給交渉は、準備が9

さて、昇給しない理由がわかったところで昇給交渉の仕方についてお話を移しましょう。どれだけしっかり準備をするかで、昇給交渉の成否が分かれます。

ステップ1:転職エージェントに登録して自分の市場価値を知る

まずは、転職エージェントや転職サイトで、自分の市場価値を知ることから始めましょう。市場価値というのは、簡単に言えば自分はいくらお給料をもらっているのが妥当なのかということです。能力や経歴、年齢や経験、資格などさまざまな要素が絡み合って、あなたの市場価値が決まります。より多くの企業に求められるような能力や経験を持ち、かつ希少価値が高い人材となれば、当然、市場価値は高くなります。これが昇給交渉の一つの根拠となります。

ステップ2:交渉のタイミングは、任される仕事が増えた時

次に考えなくてはならないのが、交渉するタイミングです。交渉するのは、上司に何か大きな仕事を任されたときがいいでしょう。仕事を任せた手前、交渉を親身に聞いてくれる可能性も高くなりますし、交渉に応じる可能性も上がります。

また、理由も言いやすいですよね。仕事量が変わらないのに昇給してください、と言うことは、その仕事の質が上がっているかよっぽど大きな成果が出せたかのどちらかです。しかし、現実的に仕事の質が上がったから昇給してくださいというのは言いづらいですし、昇給が妥当だと思われるような大きな成果を上げるのもなかなか難しいもの。ですから、何か大きな仕事を任されたり、仕事量が増えたりしたときに昇給に関する交渉を持ち掛けたほうがいいですね。

ステップ3:交渉前に謙虚な気持ちになっておく

昇給交渉をするときは、できるだけ謙虚な気持ちで臨みましょう。昇給を求めるというと、「自分は仕事でこんなにも成果を上げたんだ」とアピールするイメージが強いかもしれません。それも確かに大事なことなのですが、自分の成果をアピールするばかりでは昇給のチャンスをかえって逃してしまうこともあるのです。

上司の認識とあなたの認識がズレていると、「ただの自己評価の高いやつ」扱いされて、かえって扱いづらい存在になってしまいます。それよりは、謙虚に控えめに昇給をお願いしたほうが相手も心を開いて聞いてくれることでしょう。

ステップ4:上司や会社を持ち上げつつ、要求を伝える

また、上司や会社をうまく持ち上げて交渉することも、大きなポイントです。もちろん、白々しい持ち上げ方はNG。上司を持ち上げつつ、会社のこともうまく褒めること。上司のほとんどは管理職であって、管理職はいわば企業側の人間です。本人だけでなく、会社のこともうまく持ち上げておきましょう。

また、要求を伝えるときには少し多めに伝えるといいですね。だいたい2~3割は、多めに伝えすることをオススメします。なぜなら、要求通りの昇給は望めないからです。大体の場合は、こちらから要望を伝えてもちょっと低めの数字を提示してくることが多いのです。ですから、あえて希望の23割は多めに要求を伝えることをオススメします。

昇給交渉の2つのアプローチ

昇給交渉では、相手にいかに「昇給が妥当である」と納得させられるかが勝負になってきます。そのためには、次のようなアプローチが有効です。

1.数字や事実を活用した「交渉アプローチ」

交渉アプローチとは、数字や客観的な事実をもとに昇給の妥当性をアピールするものです。たとえば、「私は~の件で、前期比120%の増収に貢献しました」と数字を使ってアピールしたり、「~の件では、大口顧客であるA社を獲得することができました」と客観的な事実を述べたりすることですね。こうすると、主観が混じらないため、上司も昇給の妥当性を考えやすくなります。主観が混じってしまうと、どうしても感情論での交渉になってしまって相手の意地を引き出してしまいます。

数字で成果が出ている以上、上司もケチをつけにくくなるという点もメリットです。一度自分の成果を数字にしてまとめておくといいでしょう。そうすることで、上司の反論への対抗策も考えることができます。

2.数字以上のアピールをする「説得アプローチ」

中には、どんな提案に対しても「でも~」とか「つまり何なの?」と切り返してくる上司もいますよね。そういう人には数字を見せるのもいいですが、ゆっくり時間をかけて説得していくアプローチも効果的です。ここでは、上司の反論を想定して、それを一つずつつアプローチが求められます。

たとえば「120%増収って言っても、あなたのおかげだけではないでしょ?」と言ってくることは想像できますよね。そのときのために、「増えた20%のうち、私が新規開拓したA社が18%を占めます」などと反論できると相手も納得します。

さらに「昇給した後はどうするんだ、何をしてどのくらい収益を上げるんだ」と言われても「現在考えているのは~と~という施策です。これで〇%の増益を見込んでいます」などの予定まで話せると完璧ですね。昇給する根拠を示すことも大事ですが、昇給後の未来像を見せることも重要です。

昇給交渉は怖くない!

昇給交渉と言うと、ちょっと勇気がいるなと感じる人も多いと思います。しかし、昇給交渉をすることは労働者としての当然の権利ですし、うまくいかなければ次またトライすればいいのです。昇給交渉が怖いと思うのは、自分で昇給にふさわしいと思えるほどの成果を出している自信がないからかもしれません。自分こそは昇給の価値があると思えるくらい成果を出して臨むと、全く怖くないですよ! ちょっとひと踏ん張りしてみてはいかがでしょうか。