うつ病治療の費用は年10万円以上!発症防止にはメンタルチェックが有効

ストレスチェック制度とは? 自身のメンタルヘルスと真剣に向き合ってみよう


ここ数年で高まりつつある“メンタルヘルス”への意識。自身の精神面の健康状態に対して真剣に向き合い始めている人は着実に増えているようです。そのひとつのきっかけとして、2015年12月に義務化された厚生労働省による「ストレスチェック制度」が挙げられます。

メンタルヘルスを考える上でストレスチェック制度はとても重要な意味を持ちますが、ただ受けるだけではあまり意味がありません。

そこで今回は、メンタルの不調に対する具体的な治療法や治療コストなど、あらゆる観点からメンタルヘルスについて考えていきたいと思います。

「ストレスチェック制度」ってなに?

ストレスチェックとは、日々の労働や生活の中で受けている“ストレスの影響”を測るための検査・分析のこと。簡易的なものであれば、厚生労働省が運営するウェブサイト上で、セルフチェックができるようになっています。(厚生労働省「5分でできる職場のストレスチェック」

ストレスチェック制度とは、企業側が労働者のストレス状況を検査するものです。メンタルヘルス不調のリスクを低減させると同時に、検査結果を集団的に分析することで、職場環境の改善を目指すことが目的です。

基本的に、ストレスチェックは医師や保健師などによって実施され、産業医が実施者となることが望ましいとされています。結果によってメンタルの不調およびその傾向がみられた場合、本人の希望があれば産業医による面接指導を受けることも可能です。では実際のところ、どの程度の割合でストレスチェック後に医師の面接指導を受けている労働者がいるのでしょうか?

厚生労働省が実施した2017年9月の調査「ストレスチェック制度の実施状況」によると、ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を実施したのは僅か0.6%に留まっています。全衛連ストレスチェックサービス実施結果報告書によると、高ストレスと判定されたのは全体の12.3%。つまり検査の結果、高ストレス者であることが判明したにも関わらず、当の本人が面接指導を“希望していない”というケースが非常に多いということです。これでは、ストレスチェック制度の目的のひとつである「メンタルヘルス不調のリスクを低減させる」ことを実現できているとはいえません。

その一方で、当初、ストレスチェック制度は消極的な企業が多かったものの、2017年の段階では、ストレスチェックを実施した事業者のうち約8割が分析を実施しているという結果に。これを見る限り、ストレスチェック制度の必要性が浸透してきたと言えるのではないでしょうか。

まとめると、国や事業者(企業)としてはストレスチェックに取り組み、活かそうという動きが確かにみられるものの、個人レベルでは重要性がまだまだ十分に理解されていない、という印象です。

産業医による面接指導の具体的な内容は?面接後はどうすればいいの?

労働者が産業医による面接を希望しない理由として考えられるのが、具体的な指導内容が周知されていないことと、面接指導自体が日本人にとって身近なものでないという点です。

そこで改めて、産業医による面接指導の具体的な内容とは、一体どういったものなのか、見ていくことにしましょう。

面接指導は、医師と高ストレスと判定された労働者の2人だけで進められます。内容が会社や人事部に知られるといった心配はありません。場所は事業所の中や事業所に近い個室(秘密が保持される環境)で実施。医師による面接はストレス状況のヒアリングがメインであり、その場で何かしらの治療を施すわけではありません。特に身構える必要はなく、現在の状況について医師に訊かれたことのみ回答すればいいのです。

この面接を受け、医師が治療の必要性を判断。もし治療が必要となった場合、専門医療機関などの紹介を受けることになりますが、治療を受けるか否かは本人次第となります。なぜなら、事業者には治療を受けさせる義務も、費用を負担する義務もないからです。面接指導を受けたからといって、絶対に治療を受けなければならないわけではありませんので、気軽に受けてみることで、ネガティブなイメージが払拭されるかもしれません。

うつ病の診断は専門医へ:どう治療するの?治療にかかる期間は?

数ある精神疾患の中でも、日本国内で広く認知されている““心の病”が「うつ病」です。厚生労働省が実施した調査(地域住民における心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究)によると、人口に対するうつ病の有病率は約6.5%。つまり日本人の15人に1人は、生涯に一度うつ病を発症するリスクがあるということになります。

加えて、うつ病患者は年々増加傾向にあり、2017年のWHOの調査によると現在は506万人にも達しています。また、うつ病患者の4人に3人は医師による診察を受けていないと考えられているため、実際の発症者はこの数に留まりません。私たち日本人にとって、うつ病はとても身近な心の病なのです。

とはいえ、うつ病なのか否かの判断はほかの病気同様、セルフチェックすることができません。そのため、もしメンタルの不調を感じた場合は、できるだけ早く専門医による診察を受ける必要があります。

では万が一、「うつ病である」と診断された場合、どのような治療を受けることになるのでしょうか。現在、うつ病の治療にもっとも効果的とされているのが「十分な休養」と「薬による治療」です。

精神的、身体的なストレスはうつ病の大敵ですから、十分な休養はうつ病治療において必要不可欠です。また、労働者の場合は「休職」という選択肢も考えるべきでしょう。症状が深刻であれば、入院という形での休養が必要となるケースもありますが、いずれにしても、治療に専念できる環境を整えることに注力するべきです。

なお、薬による治療は「抗うつ薬」が有効とされています。当然、抗うつ薬は医師から処方を受けた上で、療法等を守り正しく服用することようにしてください。

さらにうつ病の治療では、十分な休養と薬での治療に加えて「精神療法」を用いることもあります。精神療法とは、うつ病患者の多くにみられる「否定的な思考パターン」を、専門医師のカウンセリングによって柔軟な思考に変化させていくというもの。治療の効果がある程度ではじめた後に起こる“ぶり返し”を予防する効果があるとされています。

うつ病の治療にかかる期間には相当な個人差があるものの、一定の効果が出るまでには、少なくとも1ヶ月〜3ヶ月は必要とされています。完治は難しいとされていますが、専門医による適切な治療を受けることで症状を緩和させ、日常生活を送れるようになることも十分に可能です。

うつ病に治療にかかる費用は?負担の軽減はできる?

これまでお伝えしてきた通り、うつ病には長期間に渡る治療が必要ですが、いったいどのくらいの費用がかかるのでしょうか?

まずは治療費について考えてみます。うつ病の治療費は健康保険の対象となるため、基本的には3割負担となります。1ヶ月に1回~数回ほど通院する場合、通常の治療費は1万円~2万円程度。3割負担になるので1回あたり3,000円~6,000円程度の出費です。月2回通院するとすると、月額6,000円。年間で7万2,000円となります。通院するとなれば交通費もかかります。病院まで往復1,000円程度でも、月2回通院すると考えれば年間で2万4,000円ですから、決して小さな金額とはいえません。

さらに、うつ病の治療には十分な休養が必要です。休職とまではいかなくても、長時間の残業や休日出勤などは難しくなるはず。その結果、毎月の収入が数万円レベルで減ってしまう恐れがあります。仮に残業ができなくなり、月あたりの収入が2万円程度ダウンしたとすれば、年間で24万円ものマイナスとなってしまうのです。

治療費と交通費で年間9万6,000円の出費が増え、残業代24万円がないとなると、1年間で33万6,000円のマイナスとなります。これがもし3年間続けば、合計で100万円以上もの経済的負担を強いられることになる計算です。

事実、治療費が原因で継続的な治療を受けられないというケースが増えていることから、今日では、費用負担を軽減する制度がいくつか用意されています。そのひとつが「自立支援医療制度」です。これは障害を抱えた患者に必要な医療を確保し、継続して治療を受けられるように支援するための制度で、うつ病をはじめとする精神疾患も対象となっています。

自立支援医療制度を利用すると、医療費の自己負担額が原則として1割に軽減され、所得に応じて1ヶ月あたりの負担額に上限が設けられます。このような制度をうまく利用することも、うつ病治療には欠かせません。

ストレスチェックをきっかけに、自身のメンタルヘルスと向き合おう

「義務化されたから」と、ただ単にストレスチェックを受けているだけでは何の意味もありません。重要なのは、ストレスチェック制度をメンタルヘルスと真剣に向き合うためのきっかけにすることです。

うつ病などの精神疾患については、早期に発見することが症状を緩和する一番の近道です。自分で見つけるのが難しい以上、ストレスチェックと同時に医師による面談指導や治療を受けるという選択肢も検討してみるべきでしょう。精神疾患は私たち日本人にとって、他人事ではなく、身近な問題として危機感を持ち、向き合うことが必要なのです。