介護・認知症保険の必要性

介護・認知症保険

「所定の介護状態や認知症を保障する」
介護・認知症保険

介護・認知症保険の必要性 necessity

目次

監修者プロフィール

吹田 朝子(すいた ともこ)

吹田 朝子

(すいた ともこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士、
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

ぜにわらい協会会長 一般社団法人円流塾 代表理事。人とお金の理想的な関係を追究するお金のメンタリスト®。1989年一橋大学卒業後、金融機関にて企画調査・主計部門を経て1994年より独立。
顧客相談3300世帯以上。TV出演・新聞連載など多数。結婚・妊娠・出産・子育てや転職・住宅購入、そして親の介護など、様々な人生イベントを含み、夫婦の稼ぎ方からお金の使い方、受け取り方、増やし方、そして家族のために次世代まで幸せが続くお金の使い道を設計することを生業としている。著書に「お金の流れをきれいにすれば100年人生は楽しめる!」(スタンダーズ社)、「お金オンチの私が株式投資を楽しめるようになった理由」(C&R研究所)など多数。

長尾 義弘(ながお よしひろ)

長尾 義弘

(ながお よしひろ)

ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員、辛口保険評論家

NEO企画代表。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。
著書に「コワ~い保険の話」(宝島社)、「こんな保険には入るな!」(廣済堂出版)「商品名で明かす今いちばん得する保険選び」「お金に困らなくなる黄金の法則」「保険払いすぎ見直しBOOK」「最新版 保険はこの5つから選びなさい」「老後資金は貯めるな!」(河出書房新社)、「保険ぎらいは本当は正しい」(SBクリエイティブ)。共著に「金持ち定年、貧乏定年」(実務教育出版)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ「よい保険・悪い保険」など多数。

1. 介護保険ってどんな保険?

介護保険とは「日常生活能力が無くなるリスクに備える保険」です。
介護保険は、どんな基準やポイントで選べばよいのでしょうか。真っ先に思い浮かべるのは保険料ではないかと思いますが、保険料だけをみて選ぶと失敗します。というのも、介護保険のしくみに特徴があるからです。
まずは、情報整理のため、介護保険・認知症保険のチェックポイントを確認しましょう。

何のため?
  • 病気・けが全般等/認知症で介護が必要になった時のため
いくら必要?
  • 老後の生活資金とは別に、預貯金等から計算する(目安は100〜800万円の間)
期間は?
  • 一定期間(定期)か一生涯(終身)か
誰が使う?
  • 契約者・被保険者・保険金受取人=自分
受取方法は?
  • 自分(被保険者)の要介護状態・認知症時に:一時金か年金形式で受け取る方法

チェックポイントで情報整理はできましたか?

介護保険はバリエーションが豊かで、大きく分けて4つに分類されます。
介護保険を選ぶときには、どのタイプが自分に合っているか、また必要なのかを考えることが大事です。

(2)介護保険の種類は4つ

タイプの基本は次の4つです。

  • 貯蓄タイプ、掛け捨てタイプ
  • 支払い要件が、公的保障に連動タイプ、自社基準タイプ、または両方の併用タイプ
  • 支払い基準の厳しいタイプ、緩いタイプ
  • 受け取り方が一時金タイプ、年金タイプ、両方の併用タイプ

これらの組み合わせで、介護保険はできています。
では、それぞれどんな特徴を持っているのかを見ていきましょう。

①貯蓄タイプ・掛け捨てタイプ
介護保険には、死亡保障がついている商品があります。終身の死亡保障ですから、貯蓄性があります。死亡保障のついている介護保険は、介護状態にならなかった場合でも、死亡すると保険金を受け取ることができます。その分、保険料は高くなります。
掛け捨ての介護保険は、死亡しても保険金を受け取ることができません。その分、保険料は安くなっています。

②支払い要件が、公的保障に連動タイプ、自社基準タイプ、または両方の併用タイプ
支払い要件が公的介護保険の基準に連動している場合には、公的介護保険で規定された認定を受けると保険金を受け取ることができます。
保険会社の基準によって決まる場合には、約款などに書かれた所定の状態になった場合に受け取ることができます。公的介護保険の基準と保険会社の基準は、一致しているとは限りません。
また、公的介護保険の基準と保険会社の基準の併用タイプもあります。その場合は、どちらかに該当すると、保険金を受け取ることができます。

③支払い基準の厳しいタイプ、緩いタイプ
保険金が出やすいか出にくいかの基準は、各社まちまちです。
支払い基準が緩い場合には、「要介護1」または「要介護2」で保険金を受け取ることができます。当然、受け取れる確率は高くなりますから、その分、保険料は高くなりがちです。逆に、「要介護4」や「要介護5」といったレベルにならないと、保険金を受け取ることができないタイプもあります。こちらは支払い基準が厳しい分、保険料は安くなっています。

④受け取り方が一時金タイプ、年金タイプ、両方の併用タイプ
保険金の受け取り方も違いがあります。
一時金タイプは、要介護状態になると一時金で受け取ることができます。
年金タイプは、要介護状態になったら、年金形式で受け取ることができます。
併用タイプは、一時金、年金の両方を受け取ることができます。または、どちらかを選ぶことができるものです。

介護保険は、これら①〜④の要素を組み合わせて作られています。
たとえば、「掛け捨てタイプ。支払い要件は公的介護保険制度に連動していて、要介護2以上の場合に一時金で受け取れる」介護保険とこのような形になっています。
この4つの要素を考えれば、自分に合った介護保険を選ぶことができます。ただし、死亡保険金も必要、一時金も年金も必要などと手厚い保障を望めば望むほど、保険料の高い商品になってしまいます。保険を選ぶ際には、どうしても必要な項目に絞った方が保険料は安くなります。

2. 介護保険・認知症保険のメリット・デメリット

(1)介護保険のメリット

  • ①公的介護保険の自己負担部分をカバーすることができる
  • ②公的介護保険よりも保障対象となる年齢の幅が広い
  • ③生命保険料控除で所得税と住民税を減税できる
  • ④保険会社所定の介護状態が続く限り、保険料払込免除となる場合がある

(2)介護保険のデメリット

  • ①保険料の負担する必要がある
  • ②介護認定が保険会社独自基準の場合、支払基準を満たせない可能性がある
  • ③要介護度が低い状態では公的介護保険の利用限度額を超えることは少なく、介護保険の保険会社所定の要介護状態の条件を満たせることが少ない
  • ④健康状態の告知が必要な場合がある

3. 介護保険の必要性

(1)公的介護保険について

公的介護保険とは

最初に述べましたが、平均寿命と健康寿命には大きな開きがあります。
男性は約9年間、女性は約12年間。この間はなんらかの制約を受けながら生活をすることになります。ひと目見てわかるとおり、かなり長い期間です。その最中に、要支援、要介護になることもあります。要支援・要介護になったら、公的介護保険から支援を受けることができます。

ここでは、どんな支援を受けられるのかを紹介しましょう。

まず、公的介護のしくみです。
公的介護保険は、介護が必要になったときに介護サービスを受けられる「現物支給」です。ここは誤解している人が多いようですが、現金を受け取れるわけではありません。介護サービスを1割の自己負担額で受けることができるしくみになっています(所得によっては自己負担額が2割、3割となります)。それに対して民間の介護保険は、「現金支給」です。これが大きな違いです。

要介護度別の身体状態の目安

公的介護保険では、要介護度によってその支給額が異なりますし、受けることができるサービスの内容も変わってきます。
もっとも、じっと待っていても保障は受けられません。公的介護保険を利用するには、まず「要介護認定」の申請を行い、判定をしてもらう必要があります。
本人または家族が市町村の介護保険の窓口に申請書を提出すると、調査員が自宅にやってきて、家族や本人から事情を聞き取ります。主治医に意見書を作成してもらい、それから判定になります。認定されると通知が届き、サービスを受けられるようになります。
介護認定は、次のような身体状態によって決まります。

要介護度 身体の状態(例)
要支援 1 要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態
食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。入浴や掃除など、日常生活の一部に見守りや手助けが必要な場合がある。
2 生活の一部について部分的に介護を必要とする状態
食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下がみられることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。
要介護 1
2 軽度の介護を必要とする状態
食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。
3 中等度の介護を必要とする状態
食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。
4 重度の介護を必要とする状態
食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持がひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
5 最重度の介護を必要とする状態
食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。
介護サービスとは?

では、どんなサービスを受けることができるのでしょうか?
介護サービスには、在宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスなどがあります。いずれもかかった費用の1割が自己負担です(所得によって2割、3割の場合があります)。要介護度によって、支給限度額が変わります。

要介護度 1カ月あたりの支給限度額
(自己負担1割または2割、3割)
利用できる在宅サービスの目安
要支援1 50,030円
(1割5,003円)
(2割10,006円)
(3割15,009円)
週2~3回のサービス
  • 週1回の訪問型サービス(ホームヘルプサービス等)
  • 通所型サービス(デイサービス等)
  • 月2回の施設への短期入所
要支援2 104,730円
(1割10,473円)
(2割20,946円)
(3割31,419円)
週3~4回のサービス
  • 週2回の訪問型サービス
  • 通所型サービス
  • 月2回の施設への短期入所
  • 福祉用具貸与(歩行補助つえ)
要介護1 166,920円
(1割16,692円)
(2割33,384円)
(3割50,076円)
1日1回程度のサービス
  • 週3回の訪問介護
  • 週1回の訪問看護
  • 週2回の通所系サービス
  • 3カ月に1週間程度の短期入所
  • 福祉用具貸与(歩行補助つえ)
要介護2 196,160円
(1割19,616円)
(2割39,232円)
(3割58,848円)
1日1~2回程度のサービス
  • 週3回の訪問介護
  • 週1回の訪問看護
  • 週3回の通所系サービス
  • 3カ月に1週間程度の短期入所
  • 福祉用具貸与(認知症老人徘徊感知機器)
要介護3 269,310円
(1割26,931円)
(2割53,862円)
(3割80,793円)
1日2回程度のサービス
  • 週2回の訪問介護
  • 週1回の訪問看護
  • 週3回の通所系サービス
  • 毎日1回、夜間の巡回型訪問介護
  • 2カ月に1週間程度の短期入所
  • 福祉用具貸与(車イス、特殊寝台)
要介護4 308,060円
(1割30,806円)
(2割61,612円)
(3割92,418円)
1日2~3回程度のサービス
  • 週6回の訪問介護
  • 週2回の訪問看護
  • 週1回の通所系サービス
  • 毎日1回、夜間対応型訪問介護
  • 2カ月に1週間程度の短期入所
  • 福祉用具貸与(車イス、特殊寝台)
要介護5 360,650円
(1割36,065円)
(2割72,130円)
(3割108,195円)
1日3~4回程度のサービス
  • 週5回の訪問介護
  • 週2回の訪問看護
  • 週1回の通所系サービス
  • 毎日2回(早朝・夜間)の夜間対応型訪問介護
  • 1カ月に1週間程度の短期入所
  • 福祉用具貸与(特殊寝台、エアーマットなど)
介護サービスの自己負担は?

この支給額は介護保険サービスを受けるときの負担額ですので、それ以外にかかる費用は自己負担になります。
どのような部分が該当するかというと、施設に通って利用するデイサービスの場合には、食費は全額が自己負担です。短期入所や施設サービスの場合は、食費、滞在費、日常生活費は、全額自己負担になります。また、上限額を超えたサービスも、自己負担になります。

高額介護サービス費とは?

自己負担額が高額になったときには、軽減できる制度があります。
それが、「高額介護サービス費」です。
介護サービスの1か月分の自己負担額が高額介護サービスの限度額を超えた場合に、その分を払い戻してくれます。所得によって限度額が違いますが、一般の所得なら世帯限度額は4万4400円です。この世帯限度額は、同じ世帯で複数サービス利用者がいる場合には合算できます。

所得の段階区分 世帯の限度額
(1) 現役並み所得者(課税所得145万円以上※1) 44,400円
(2) 一般の所得者(世帯※2 内の一員が住民税課税者) 44,400円
(3) 住民税非課税者 24,600円
(4) うち課税年金収入額+合計所得金額が80万円以下 個人15,000円
(5) うち老齢福祉年金受給者など
  • ※1 課税所得145万円とは住民税の課税所得。基礎控除や配偶者控除など各種の所得控除を差し引いた後の金額。
  • ※2 世帯とは住民基本台帳上の世帯員。
高額医療合算介護サービス費とは?

さらに、1年間の医療保険と介護保険の自己負担額を合算して「高額医療・高額介護合算療養費制度」における限度額を越えたら、「高額医療合算介護サービス費」として払い戻しを受けることができます。この限度額は、所得に応じて変わってきます。詳しくは下の表を参考にしてください。申請を行う際は、介護保険の窓口か、加入している医療保険の窓口に相談をしてください。

世帯収入金額 75歳以上 70~74歳※1 [参考]
70歳未満※1
年収約1,160万円〜 67万円 67万円 212万円
年収約770~約1,160万円 67万円 67万円 141万円
年収約370~約770万円 67万円 67万円 67万円
~年収約370万円 (課税所得145万円未満)
  • ※ 収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合も含む。
  • ※ ただし所得の合計額が210万円以下の場合も含む。
56万円 56万円 60万円
市町村民税世帯非課税 31万円 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税 (年金収入80万円以下等) 19万円※2 19万円※2 34万円
  • ※1 対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を 合わせた額に限度額を適用する。
  • ※2 介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。
主な在宅サービスとは?

在宅サービスには、自宅で受けるサービス、施設に通って受けるサービスがあります。
必要に応じて、さまざまに組み合わせをすることができます。
どのようなサービスがあるのか、主なものを紹介します。

○自宅で受けるサービス

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導

○施設などを利用して受けるサービス

  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 短期入所生活介護(福祉施設でのショートケア)
  • 短期入所療養介護(医療施設でのショートケア)
  • 特定施設入居者生活介護

○介護環境を整えるサービス

  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具購入費の支給
  • 住宅改修費の支給
主な地域密着型サービスとは?

在これは住み慣れた自宅や地域で生活が続けられるように、柔軟なサービスを提供する目的で設けられています。
主なサービスを紹介しましょう。

○自宅で受けるサービス

  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

○施設などを利用して受けるサービス

  • 認知症対応型通所介護
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
施設サービスとは?

公的介護保険で指定されている介護施設は3つあります。

  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設

それぞれ特徴があり、施設のサービス費用も決まっています。

介護老人福祉施設
原則、新規での入所の場合は、要介護3以上の人が対象です。常に介護が必要な状態で、在宅介護が困難な人が利用します。

介護老人保健施設
要介護1以上の人が対象です。病状が安定しており、看護や医学的管理のもとで機能訓練を行い、自宅復帰を目指す人の施設です。

介護療養型医療施設
要介護1以上の人が対象です。慢性疾患などにより長期の療養を必要とする人が、医療や介護、日常生活での世話を受ける病院です。平成30年4月より「介護医療院」の創設にともない、現在の「介護療養型医療施設(病院)」は、介護医療院や介護老人保健施設へと転換することになります。

3つの施設サービス以外にも、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「認知症対策型共同生活介護(グループホーム)」など、さまざまなものがあります。

・有料老人ホーム
有料老人ホームは、24時間体制の介護サービスが受けられる「介護付き」、状況に応じて外部の介護サービスを受けられる「住宅型」、食事提供や生活サポートなどを受けられる「健康型」の3種類があります。

・サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、「サ高住」とも言われ、60歳以上、または要介護者・要支援者で、介護不要から軽度の介護が必要な高齢者までが対象の介護施設です。中には「認知症を患っていない」「身の回りのことが自分でできる」などの条件を設定しているところがあります。

・認知症対策型共同生活介護(グループホーム)
要支援2以上で原則65歳以上の認知症高齢者で、施設がある自治体に住民票を持つ方が入居できる施設。家庭的な環境で自立支援と精神的安定を図り、症状の進行を遅らせることを目指していますが、重度の介護状態や医療ケアが必要になった場合は退去しなければならないケースがあります。

(2)介護保険の必要性について

介護にかかる費用は

介護にはお金がかかるだろうと想像できても、その金額となると漠然としています。いったいどのくらい用意をしていればいいのでしょうか?
介護費用の調査では、生命保険文化センターのデータがよく使われます。しかし、ここは損保ジャパン日本興亜が2019年4月に実施した「介護費用アンケート調査」のデータを紹介しましょう。介護費用の実態をよく反映したデータになっています。
調査結果によると、介護にかかる初期費用は約100万円。介護費用の総額としては平均787万円が必要になってきます。月額の負担は約13万円です。
かなりのお金を準備する必要があります。
初期費用の内容をみると、バリアフリーなどの住宅の改修費用が最も多く、ついで介護施設への入居一時金、医療費、福祉器具などの支出になっています。

介護にかかる月額の費用とは

介護で毎月かかってくる費用といえば、入居型の介護施設の利用料、訪問介護の費用、医療費などがあげられます。
悩ましいのは、それがいつまで続くかという点です。というのも、介護の期間は非常に長くなることが多いのです。
介護期間の平均は、3年7ヵ月(43.1ヵ月)です。
もちろん、平均ですから、長い人もいれば短い人もいます。こればかりは、そのときになってみないとわかりません。

ここで示した介護費用は、公的介護サービスを使ったときの自己負担額です。
総額で約800万円かかるといっても、この金額が一気に必要なわけではなく、約4年間の負担額です。ただ、かなり大きな負担であることはたしかです。年金が多ければなんとかなる人もいると思いますが、それでも厳しいかもしれません。

民間の介護保険の利用度は

損保ジャパン日本興亜の調査によると、約7割の人が公的介護保険を利用している一方、民間の介護保険を利用している人は約1割程度だとのこと。まだ、民間の介護保険を活用している人は少ない現状が読み取れます。

民間の介護保険の利用度
要介護者になる人は

要介護または要支援の認定を受けた人は、2015年度末で606.8万人います。2003年年度末の要介護者は370.4万人でしたから、12年間で236.4万人増加していることになります。
年齢別にみると、65歳から74歳で要介護の認定を受けた人は2.9%ですが、75歳以上では23.5%とグッと増えています。
介護が必要になった主な原因は、「認知症」が18.7%ともっとも多く、次いで「脳血管障害(脳卒中)」が15.1%、「高齢による衰弱」が13.8%、「骨折・転倒」が12.5%となっています。
男女を比較すると、男性は「脳血管障害(脳卒中)」が23.0%と1位であるのに対して、女性は「認知症」が20.5%と最多を占めています。
また、どこで介護を受けたいかという希望については、自宅で介護を受けたいと答えた人が73.5%ともっとも多くなっています。

24-65歳以上の要介護者〜要因
介護する側の負担

ところで、介護は患者本人だけの問題ではありません。
介護を受ける側は公的な介護保険があります。したがって、年金が多い人は金銭的にはなんとか賄えるかもしれません。
しかし、介護をする側の負担も見逃せない問題なのです。
要介護状態にもよりますが、認知症などの場合は、介護する家族の負担はより多くなります。
長寿社会になったため、70代の子どもが90代の両親を介護するといった、いわゆる老老介護が珍しくなくなりました。少子化の影響で、一人っ子同士の結婚も増えています。その結果、自分の両親に配偶者の両親を加えた4人の介護を、一手に担うようになったというケースもあります。そうなると介護をする側は、いつ終わるのかわからない重荷を背負うことになります。
介護のために離職する人も多く、社会問題にもなっています。
介護や看護のために仕事を辞めた人は年間約9万人います(厚生労働省「雇用動向調査」平成27年)。そのなかでもっとも多いのが40代、50代の正規社員で、全体の約7割を占めているのです(総務省「平成29年就業構造基本調査」)。
介護する側にとっても大きなリスクになるので、見過ごすわけにはいきません。

介護する人は誰か?

では、介護する人は誰になるのかを考えてみましょう。
厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」によると、介護をする人は配偶者が25.2%で1番です。しかし、介護を必要とする時期には配偶者も高齢者ですね。高齢者が高齢者を介護することになり「老老介護」という事態が発生します。60歳以上の人が介護を行っている割合は約7割です。さらに高齢者が認知症で、その介護をする高齢者も認知症の場合には「認認介護」になります。
続いて、子どもが介護するのは21.8%で、子どもの配偶者は9.7%です。介護する子どもが40代、50代というケースが考えられますが、子育てがまだ終わっていない場合には、親の介護と子育てを同時並行で行わなければなりません。これを「ダブルケア」といいます。この「ダブルケア」を行う人は約25万人いると言われています(内閣府男女共同参画局「育児と介護のダブルケアの実体に関する調査(平成28年4月)」)。

要介護者からみた主な介護者の続柄
介護休業給付金とは

このように、介護する側に取っても経済的な負担が大きくなります。まずは貯蓄で備えておきましょう。
約800万円の費用を貯蓄で備えるのが難しい場合は、民間の介護保険を利用するのもひとつの手です。介護保険は、自分の介護に備える点も重要ですが、家族に対する負担を減らすという意味でも大切になります。
ちなみに、「親の介護費用保険」という商品が一部の団体保険で発売をされていますが、一般的にはまだ普及していません。
その他、雇用保険には、介護休業給付金という制度があります。
この制度を利用すると、一人の介護に対して最長3ヵ月の介護給付金を受け取ることができます。支給額は原則として賃金の67%となっています。また、別の家族に介護が必要になった場合は、新たに最長3ヵ月間の受け取れます。こういった制度も使ってみてください。

認知症とは

次に認知症について説明をしていきましょう。
認知症の高齢者の数は、2012年には462万でした。2025年には約700万人まで達し、65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症患者になると言われています(厚生労働書「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域作りに向けて(新オレンジプラン)2015年」)。
このほかにも、認知症と健常者との中間、すなわちグレーゾーンに位置する人が多数います。
認知症はもはや他人事ではなく、国民病ともいえる病気となっています。
認知症とひとくくりにしていますが、そのうちの約50%はアルツハイマー型認知症です。20%がレビー小体型認知症、15%が脳血管性認知症で、15%がその他の認知症になります。
もっとも多いアルツハイマー型認知症は、早期発見・早期治療がとても重要です。認知症を完全に治すことはできませんが、進行を遅らせることは可能だとわかっています。
しかも、早期に治療をすれば、その効果は大きくなると言われます。病気の進行を遅らせることができたら、それだけ健康な生活を送れる時間も長くなるのです。
認知症の一般的な検査は、「長谷川式認知症簡易評価スケール」と「ミニメンタルステート検査(MMSE)」があります。簡単な質問で検査ができます。心配な人は一度受診してみてはいかがでしょうか。
早期に発見すると、病変の広がりを薬で遅らせることが可能です。それは入院期間の短縮にもつながり、本人にとっても家族にとってもメリットが大きくなります。

認知症の費用

認知症の介護は、徘徊などに備えて常時付き添いが必要になるかもしれません。すると、公的介護サービスの限度利用額を超えてしまうことがあります。超えた分に関しては自己負担ですので、追加の費用がかかってきます。重度の認知症を在宅介護している場合、年間に約60万円の費用負担が発生するケースも見受けられます(朝日生命保険のHPより)」。
厚生労働省と慶應義塾大学の研究班が、認知症の社会的費用を推計しているデータがあります。
年間にかかるコストは、医療費が1.9兆円・介護費用は0.4兆円・インフォーマルケアコストは6.2兆円です。
要介護者一人当たりでは、どのくらいのコストになるのかを考えてみましょう。
一人当たりの入院医療費は月額34万4000円、通院医療費は月額3万9600円。
入院をしたとしても高額療養費がありますから、70歳以上ならば実際の負担額は4万4400円以上はかかりません(自己負担の割合は年収によって変わります)。
通院だと自己負担は2割ですから、8000円程度で大丈夫でしょう。年間でも自己負担額は10万円くらいだと思います(こちらも自己負担の割合は年収によって変わります)。
介護サービスの費用は、在宅介護の場合は一人当たり年間219万円、施設介護なら一人当たり年間353万円。これは要介護状態の段階によって受けられるサービスが変わってきます。

インフォーマルケアコストとは

次に、「インフォーマルケアコスト」です。聞き慣れない言葉ですが、家族等が無償で行うケアを時給に直して、かかったコストを計算したものを指します。
要介護者一人当たりのインフォーマルケア時間は、週に24.97時間。インフォーマルケアコストは年間で382万円だそうです。
認知症患者を抱えた家族は、多大な時間とコストを負担することになるのです。
このコストを少しでも軽減するためには、早期発見がとても重要です。認知症のテストを受けるようにしてください。

(3)介護保険の税金と控除について

民間の介護保険に契約をすると、払い込んだ保険料に対して生命保険料控除があります。そのため、所得税・住民税の負担が軽減されます。
なお、平成24年1月1日以降(新制度)と平成23年12月31日以前(旧制度)では、分類が変わりました。
旧制度では「一般生命保険料控除」の対象でしたが、新制度では「介護医療保険料控除」または「一般生命保険料控除」になります(商品によっては「一般生命保険料控除」になる場合があるので、保険会社に確認を取ってください)。

新制度での生命保険料控除額
所得税 住民税
区分 年間
払込保険料額
控除される金額 年間
払込保険料額
控除される金額
一般生命保険料/介護医療保険料/個人年金保険料(税制適格特約付加) 20,000円以下 払込保険料全額 12,000円以下 払込保険料全額
20,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+10,000円
12,000円超
32,000円以下
(払込保険料×1/2)
+6,000円
40,000円超
80,000円以下
(払込保険料×1/4)
+20,000円
32,000円超
56,000円以下
(払込保険料×1/4)
+14,000円
80,000円超 一律40,000円 56,000円超 一律28,000円
旧制度での生命保険料控除額
所得税 住民税
区分 年間
払込保険料額
控除される金額 年間
払込保険料額
控除される金額
一般生命保険料/個人年金保険料(税制適格特約付加) 25,000円以下 払込保険料全額 15,000円以下 払込保険料全額
25,000円超
50,000円以下
(払込保険料×1/2)
+12,500円
15,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+7,500円
50,000円超
100,000円以下
(払込保険料×1/4)
+25,000円
40,000円超
70,000円以下
(払込保険料×1/4)
+17,500円
100,000円超 一律50,000円 70,000円超 一律35,000円
介護保険の税金

介護保険で被保険者が受け取る介護一時金や介護年金は非課税です。ただし、介護年金の受け取りが終わらないうちに被保険者が死亡してしまうと、被保険者の相続人が年金を受け取ります。その場合には相続税と同じ考え方になります。
死亡保険金のある介護保険も、一般的な生命保険と同じ扱いになります。