医療保険

【FP監修】子どものために保険は必要か?自治体で受けられる医療費助成制度をわかりやすく解説

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1  自治体による乳幼児医療費助成制度(小児医療費助成制度)

乳幼児医療費助成制度は子育て世帯の経済的負担を軽減するために、都道府県と市区町村で、医療費の一部負担金を助成する制度です。自治体によって名称は異なり、「小児医療費助成制度」と呼ぶ場合もあります。対象となるのは、 国民健康保険や社会保険などの医療保険に加入している子供です。

対象年齢は市区町村によって異なります。たとえば品川区の場合は、「子どもすこやか医療費助成」として、中学3年生(15歳到達後最初の3月31日)までの保険診療の自己負担分を品川区が助成しています 。 対象は、入院・通院に加え、入院時の食事負担金です。入院については、2019年7月から対象範囲が広がり、高校3年生までとなりました。品川区の場合は、所得制限がありませんので、年収に関わらず助成を受けることができます。

さいたま市に住む子供の場合、「子育て支援医療費助成制度」として、入院・ 通院 ともに15歳年度末までが助成の対象となっており、所得制限はありません。

横浜市では、「小児医療費助成」として、中学3年生までの保険診療の一部負担金を助成しています。 また小学4年生から中学3年生の通院については、通院1回につき500円の窓口負担があります。所得制限もあり、たとえば扶養親族等が3人の場合の所得制限は654万円となっています。

川崎市の「小児医療費助成」は、入院が中学3年生まで、通院が小学6年生までとなっており、通院の医療費助成には所得制限があります。たとえば扶養親族等が3人の場合の所得制限は744万円となっています。

千葉市の「子ども医療費助成制度」は、中学3年生までが対象で、入院・通院、院外処方せんにより保険薬局で薬を受け取った場合に、自己負担額の全部又は一部を助成しています。入院・通院ともに300円又は500円の窓口負担があります。千葉市の場合、所得制限はありません。

<主な市区の医療費助成制度>

市区 対象 所得制限 窓口負担
品川区 中学3年生まで なし なし
さいたま市 中学3年生まで なし なし
横浜市 中学3年生まで あり あり
川崎市 入院:中学3年生まで

通院:小学6年生まで

あり あり
千葉市 中学3年生まで なし あり

なお、学校管理下において、病気やケガをした場合は、スポーツ振興センター災害共済給付の対象となる可能性があります。この場合は、災害共済給付が支給されます。また、医療費助成制度は市区によって異なりますので、たとえばさいたま市では中学3年生までとなっていますが、高校3年生までとしている市も数多くあります。

2 高額療養費制度と医療費控除による負担軽減

高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に、自己負担限度額を超えた分の医療費が還付される制度です。年収約370~770万円の場合、1ヶ月の上限額は、「80,100円 + (医療費 - 267,000) × 1%」で計算します。80,100円をベースに、267,000円を超えた医療費分は1%しか増えませんので、1ヶ月の医療費負担は多くても8~10万円程度となることが分かります。

たとえば医療費(10割分)が30万円の場合、

・80,100円 - (300,000円 - 267,000円) ✕ 1% =  80,430円

となり、80,430円が自己負担上限額ですので、この金額を超えた分は高額療養費として支給されます。

医療費が300万円の場合でも、自己負担上限額は107,430円となります。子どもの医療費助成では、この高額療養費の自己負担分も対象となります。

<高額療養費制度(69歳以下) 自己負担上限額の計算式>

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~ 252,600円 + (医療費 - 842,000) × 1%
年収約770~約1,160万円 167,400円 + (医療費 - 558,000) × 1%
年収約370~約770万円 80,100円 + (医療費 - 267,000) × 1%
~年収約370万円 57,600円
住民税非課税者 35,400円

また医療費控除は、1月1日から12月31日までの間に本人又は本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けることができます。医療費控除は次の算式で求めます。

(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされる金額) - 10万円(※)
※総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額

たとえば実際に支払った医療費の合計額が30万円で、保険金などで補てんされる金額がなければ、
30万円 - 10万円 = 20万円(総所得金額等が200万円以上の場合)
となり、20万円を医療費控除として適用することができます。なお、乳幼児医療費助成制度(小児医療費助成制度)により給付された分は「保険金などで補てんされる金額」として差し引く必要があります。

保険金などの給付を受けていなければ、10万円を超えた場合に医療費控除を適用することができます。

3 所得制限により医療費助成が受けられない場合

ここまで解説してきたとおり、各自治体でおおむね中学3年生までは医療費助成制度がありますので、医療保険は必要ありません。ただ窓口負担がある自治体や所得制限があり助成制度を受けられない自治体に住んでいる人で、医療保険の必要性を感じていれば、加入するという選択肢もあります。

このような場合、契約者を父(母)、被保険者を子とする医療保険に加入することになりますが、契約時のポイントや注意点を解説します。

・保険期間は、保障が一生続く「終身型」と一定期間のみ保障される「定期型」があります。他の条件が同じであれば、終身型よりも定期型の方が保障期間が短いため保険料は割安となります。

・保険料払込期間は、特定の年齢までに保険料を支払い終える「有期払」と保険期間中ずっと保険料を支払う「終身払」があります。有期払には、60歳払済や10年払済などがあります。他の条件が同じなら、有期払よりも終身払の方が保険料は割安となります。

・入院給付金の日額は、入院した場合に給付される1日当たりの金額で、日額5,000円や日額10,000円などがあります。

・通院保障は、一般的に入院したあとの通院に支払われる保険ですが、入院を伴わない外来による治療を受けた場合に、1日3,000円などの通院給付金が支払われる保険もあります。

・先進医療特約は、厚生労働省が指定する先進医療技術の治療を受けたときに支払われる保障で、通算2,000万円までなど、上限内であれば支給されます。

ネット上でシミュレーションする場合や相談する場合には、上記の内容を決めておくとスムーズに進みます。

ただ医療保険によっては、契約者と被保険者が同一の場合のみ加入できる商品がありますので、この場合、「契約者を父(母)、被保険者を子」とすることはできません。シミュレーションで被保険者の年齢が「満20歳以上」となっていると、被保険者を子とすることはできませんので、注意が必要です。

4 医療保険の契約者を子にする場合

子どもを被保険者とした医療保険に加入し、子どもが保険料を支払える年齢になったら契約者変更をすることも考えられます。契約者変更自体、保険会社で手続きをすることができますが、親が保険料を支払っていた「医療保険」が親から子に移転することになり、課税関係が気になるところです。

解約返戻金のない掛捨型の医療保険の場合、税関係は次のようになります。

<掛捨型の医療保険 契約者変更・契約者死亡時>

変更時点 入院給付金等受取時
契約者変更 税金(贈与税)はかからない 税金(贈与税)はかからない
契約者死亡による変更 税金(相続税)はかからない 税金(相続税)はかからない

税務署に問い合わせたところ、相続税は、贈与で取得したとみなされるものとみなす場合について「生命保険契約の保険事故(傷害、疾病その他これらに類する保険事故で死亡を伴わないものを除く)が発生した場合において(以下略)」(相続税法5条)規定しており、契約者変更は相続税や贈与税の対象外とのことです。

また入院給付金自体は所得税の課税対象外となります。

ただし、解約返戻金のある医療保険の場合、資産価値がありますので、取り扱いが異なります。

契約者変更した場合には解約返戻金相当額が贈与税の課税対象、契約者死亡により変更した場合は相続税の課税対象となります。

契約者変更したあと、解約返戻金を受け取った場合、所得税の課税対象となります。死亡による契約者変更を含めて、権利を受け継いでいますので、父(母)が支払った分の保険料とその後、子が支払った分の保険料は合計して経費とすることができます。

<解約返戻金のある医療保険 契約者変更・契約者死亡時>

変更時点 解約返戻金相当額
契約者変更 贈与税の課税対象 所得税の課税対象

ただし、前の契約者が支払った保険料も差し引くことができる。

契約者死亡による変更 相続税の課税対象

ちなみに、解約返戻金相当額を一時金で受け取った場合、一時所得に該当し、次の算式で計算します。

ポイント

(解約返戻金相当額 - 支払った保険料 ー 最大50万円)✕   ½
※総所得金額に算入するときの算式

支払った保険料に父(母)が支払った保険料を含めることができます。

契約者変更により、贈与税、相続税、所得税の課税対象となりますが、実際に税金がかかるかどうかは別の話です。計算した結果、税金がかからないこともありますので、「課税対象=納税」ではないことに注意してください。

5 社会保障制度を含めた保険の検討を

自治体の医療費助成制度により、子にかかる医療費負担は軽減されています。そのため、一般的には、子の医療保険は不要ですが、自治体によっては、所得制限により助成制度を受けられない人も出てきます。

所得が高ければ、助成制度がなくても医療費の支払いは負担にならないかもしれませんが、必要性を感じる場合は、契約時のポイントや注意点を参考に、検討してみてください。

  • この記事を書いた人
橋下秀樹

橋下 秀樹

CFP®、宅地建物取引士、証券外務員二種。これまで様々なお金に関する相談を通じ、家計への負担軽減のアドバイスを実施。ファイナンシャルプランナーとして講師も務める。ライフプランニング、住宅ローン、教育資金、退職後の生活資金、保険の見直しなど幅広い分野の執筆活動を行う。

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