転職をしたり仕事を失って収入が減ったり、子どもの教育費がかさんだり、親の介護で多額の費用がかかったり、人生の中では様々なことが起こります。「保険料の支払が厳しい」「まとまったお金が必要」など家計が苦しくなったときは、加入している生命保険を解約することも選択肢のひとつです。
しかし、一旦生命保険を解約すると保障はなくなってしまいます。また、もし解約するとしても、場合によっては受け取る解約返戻金に対して税金がかかることがありますので、解約返戻金をすべて受け取ることができない場合もあります。

目次
解約のデメリット
保険を解約することで保険料負担を減らしたり、まとまったお金を受け取ることができますが、解約にもデメリットはあります。
特に気をつけないといけないのは以下の3つです。
注意ポイント
① 保障がなくなってしまう
② 新たに保険加入するとき保険料が高くなることがる
③ 健康上の問題があれば新たな保険に加入できないことがある
このようなデメリットを考えたとき、解約する以外で保険料負担を減らす方法があると知っておくことも必要です。
解約せずに保険料負担を減らす3つの方法
生命保険の契約を解約した場合のデメリットは小さくはありません。
そうは言っても、様々な事情で保険料の負担が難しいこともあるでしょう。
もし、できることなら契約している生命保険を解約せずに保険料の負担を減らしたいとは思いませんか?
次の3つの方法で、生命保険を解約せずに保険料の負担を減らすことができるかもしれません。
- 保障内容を減額する
- 払済保険に変更する
- 延長定期保険に変更する
それぞれについて説明していきます。
① 保障内容を減額する
減額とは
死亡保険金額を減らしたり、入院給付金日額を減らしたり、特約の一部を解約することで、結果として保険料を抑えることができます。
ココに注意
ただし、商品によっては最低限確保しなければいけない最低保険金額や、最低限支払わなければいけない最低保険料額が決められていることもあるため、そもそも最低限の保障内容で契約している場合、減額ができないこともあります。
また、非喫煙・健康体割引※1など特殊な割引が適用されている契約の場合、減額をすることで割引された保険料率が適用されなくなることがあります。
一旦減額すると、もとの契約の状態に戻すことはできないため、変更する際には本当に変更していいのかしっかりと検討する必要があります。
② 払済保険に変更する
払済保険(はらいずみほけん)とは
払済保険に変更すると保障額は少なくなります。
ココがポイント
手続き以降の保険料の払込は不要になります。
もとの契約の保障期間のまま保険を継続することができるので、保障がすべてなくなるという心配がありません。
また、解約返戻金がある場合、その解約返戻金を据え置くことができるので、解約をして損をするということはなくなります。
ココに注意
また、払済保険に変更することで、付加されていた各種特約も消滅してしまいますので、契約の際に必要な特約を付加した場合には、変更手続きの前にさらに慎重になることが求められます。
なお、保険種類によってはそもそも払済保険への変更ができないものもあります。
③ 延長定期保険に変更する
延長定期保険(えんちょうていきほけん)とは
延長定期保険への変更手続きをすると、死亡保障金額はそのままになりますが、保険期間が短くなることがあります。
ココがポイント
手続き以降の保険料の払込は不要になります。
付加されている各種特約は消滅するため、契約の際に必要な特約を付加した場合には、変更手続きの前にさらに慎重になることが求められます。
ココに注意
変更時点でその保険契約の解約返戻金額が少ない場合、延長定期保険への手続きができないことがあります。
なお、保険種類によってはそもそも延長定期保険への変更ができないものもあります。
まとまった資金が必要な場合
まとまった資金が必要な場合、生命保険を解約して、解約返戻金を利用するという方法がありますが、契約を解約せずに、「契約者貸付」という制度で資金を一時的に用意することが可能です。
契約者貸付(けいやくしゃかしつけ)とは
貸付金には保険会社で定めた一定の利息(複利)がつき、その利率は商品や契約時期によって異なります。
また、貸付金はいつでも全部または一部を返済することができます。
もし貸付金を返済せずに満期を迎えたり、被保険者が死亡した場合には、受取保険金から未返済分の貸付金に利息を足した金額が差し引かれることになります。
ココに注意
ただし、保険種類によっては解約返戻金がないものもあるため、そもそも契約者貸付を利用できないこともあります。
解約返戻金に税金がかかる場合
支払った保険料に対して解約返戻金の方が多かったとき(利益が出ている)、受け取った解約返戻金に税金がかかる場合があります。
そもそも保険は相互扶助の精神で成り立っていますので、満期金や解約金が支払った保険料総額よりも多く一定の利益が出ている場合には、解約返戻金から差し引かれる形で税金を支払うことになります。
解約返戻金は一時所得で所得税の課税対象
通常、解約は保険契約者が手続きを申請し、その保険契約者は保険料を支払う義務がある人を指します。
よって、保険料を支払った人と解約返戻金を受け取った人が同一であることが多いでしょう。
その場合、解約返戻金は一時所得となり所得税の課税対象となります。
所得税にかかる一時所得の金額は次のように計算します。
一時所得の金額=(総収入金額-収入を得るために支出した金額)-特別控除額(最高50万円) ※2
例えば、保険加入から20年で支払った保険料総額が100万円、解約返戻金額が160万円だった場合、一時所得の計算は次のようになります。
{160万円 (解約返戻金額) - 100万円 (支払った保険料総額) } - 50万円(特別控除)= 10万円(一時所得)
この10万円に対して税金(所得税)がかかることになります。
実際には、一時所得は、その金額の1/2に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
税率は全体の所得額によって変わってきますが、仮に税率を10%で計算すると、5,000円が支払う所得税ということになります。
10万円 × 1/2 × 税率 10% = 5,000円
この計算からもわかるように、解約返戻金額と支払った保険料総額との差が50万円以下であれば、特別控除もあることから税金がかかりません。
もし50万円を超えたとしても一時所得はその金額の1/2しか課税されることはありませんので、支払う金額は少額ですみます。
所得税以外で税金がかかる場合も
一方、途中で契約者変更があった場合など、保険料を支払った人と解約返戻金を受け取った人が異なるケースが稀にありますが、その場合は、所得税ではなく贈与時の課税対象となります。
贈与税には年間110万円の基礎控除がありますので、解約返戻金が110万円未満なら贈与税がかかりません。
110万円を超えた場合は超えた金額に対しては一定の税金がかかります。
また、贈与税は所得税とは異なり、保険料をいくら支払ったかは関係ありませんので、受け取った解約返戻金すべてが課税対象となります。
贈与税は所得税(一時所得)と比べて高額ですので、保険に加入する際には保険料を支払う人と解約返戻金や満期金を受け取る人とを誰にするかをよく考えておきましょう。
まとめ
様々な事情で保険料の支払が困難になったり、まとまったお金が必要になったとき、解約以外にも以下のような方法を選ぶことができます。
ポイント
・保障内容を減額する
・払済保険に変更する
・延長定期保険に変更する
・契約者貸付を利用する
基本的にこれらの手続きは契約者自身が判断して行いますが、そのタイミングや具体的な手続きの方法などで迷うことがあるかもしれません。
そんなときは、保険の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみましょう。専門知識を持つFPであれば、家計診断や保険の見直しから手続きの方法まで、必要な情報をしっかりとアドバイスしてくれるはずです。
もちろん保険相談をしたからといって必ず保険に加入しなければいけないということはありませんので、まずは一度気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
※1非喫煙・健康体割引とは、1年以上タバコを吸っていない、血圧やBMI値などが保険会社が定める範囲内だったときに保険料が割引される制度
※2参照:国税庁ホームページ「一時所得」より