就業不能保険

大学生は就業不能保険に加入ができる?

私立大学に通う学生の家計状況

私立大学に通う学生を持つ家庭の家計状況について見ていきます。東京地区私立大学教職員組合連合が行った「2018年度立大学新入生の家計負担調査」の一部を紹介します。

<「6月以降の仕送り額(月平均)」の推移>によると、月平均の仕送り額は年々減少しており、2018年度は83,100円となっています。自宅外生の場合、学費や教科書代、交通費等のほかに、家賃や生活費等がかかります。仕送りしてもらう場合、仕送りする金額は「家賃分」や「家賃分+生活費分」など何らかの基準で決めると考えられます。東京都内のワンルームマンションの家賃相場を考えると、月平均83,100円という金額は「家賃分」を仕送り額としていると予測されます。家賃が安ければ、生活費分も仕送りしているでしょう。

<「6月以降の仕送り額(月平均)」から「家賃」を除いた生活費の推移>は、家賃を支払った残りの金額の推移です。2018年度は月額平均20,300円となっていますが、交通費や文房具代などを考えると、食費や水道光熱費、被服費などの基本生活費は学生のアルバイト代でまかなっている可能性が高いと考えられます。セキュリティがしっかりしているマンションなどであれば家賃相場は上がりますので、月額平均20,300円も残らない可能性もあります。

ここで紹介した2つのデータから考えられるのは、学生自身も一定の費用負担をしていることです。学生生活で不足している額は学生によって差はありますが、学生自身のアルバイトなどによる収入も学生生活に欠かせないと言えます。

この状況で、親が病気やケガで働けなくなり学費や仕送りが支払えなくなった場合や学生自身の収入がなくなった場合、これまで通りの学生生活は送れなくなり、大学を辞めざるを得ない状況になるかもしれません。

大学を辞めるという選択肢は極力避けるとして、保険を利用して収入減に備える方法がありますので、いくつか紹介します。

大学生協保険とは

大学生協保険は、各大学生協の組合員が加入できる保険です。生協の組合員になるためには、在学している大学生協に出資金を支払う必要があります。出資金の額は大学によって異なります。組合員が加入できる生協保険には様々な種類の保険がありますが、病気やケガで収入が減ったときに備える「扶養者所得保障保険」があります。

「扶養者所得保障保険」は、損害保険会社が取り扱う所得補償保険です。1年定期の掛け捨てタイプで、働けなくなったときに、1ヶ月10万円、最長12ヶ月の保障を受けることができます。10万円という金額は、2017年10月の「大学生の消費生活に関する実態調査」に基づいており、調査では自宅外生の1ヶ月仕送り平均額72,980円、1ヶ月の生活費120,750円となっています。

保険料は、年間18,870円となっており、年途中で加入することもできます(保険料は減額されます)。保険金額が10万円では不足する場合もあるかもしれませんが、保険金額を上げると保険料も高くなりますので、妥当な金額と考えることもできます。

先ほど紹介した「2018年度立大学新入生の家計負担調査」の仕送り平均額分はカバーすることができますので、働けなくなったときに、学費は準備できているが、生活費が不足してしまう人に向いていると言えるでしょう。

しかし学生自身が加入できない点には注意が必要です。

就業不能保険とは

就業不能保険は、民間の保険会社が取り扱う保険で、病気やケガで働けなくなった場合に、毎月、契約時に決めた給付金を受け取れる保険です。入院中や医師等の指示による自宅療養中等の状態で給付されます。

年齢や性別によって保険料は異なり、保険期間はおもに55歳、60歳、65歳、70歳までとなっています。

就業不能保険は、働けなくなった場合の収入をカバーする保険ですので、大学生が加入できるかどうか、実際の就業不能保険で確認しておきます。

〇ライフネット生命「就業不能保険 働く人への保険2」

“学生、年金生活者・資産生活者、無職などに該当される方はお申し込みができません。また、年収100万円以下の方もお申し込みができませんので、あらかじめご了承ください(主婦・主夫は除きます)。”
※引用:ライフネット生命「就業不能保険 働く人への保険2」
https://www.lifenet-seimei.co.jp/product/disability/detail/

〇三井住友海上あいおい生命「くらしの応援ほけん」

“被保険者が主婦(主夫)、アルバイト・フリーター、学生、資産生活者、年金生活者等、一部のご職業等によってはお申し込みいただけません。”
※引用:三井住友海上あいおい生命「くらしの応援ほけん」
https://www.msa-life.co.jp/lineup/syunyu-kurashi/

このようにライフネット生命と三井住友海上あいおい生命では、はっきりと学生は申込できない旨が書かれています。

学費や生活費の一部など親が負担していることを考えると、親が働けなくなった場合に備えて就業不能保険の加入を検討するといいでしょう。

また大学生協保険の「扶養者所得保障保険」と比べると、保険金額を自由に設定できますので、働けなくなったときに学費などもカバーしたい場合に向いていると考えられます。

大学生が安心して学業を続けるために

大学の初年度納付金は国の教育ローン、毎月の生活費は奨学金を利用している人が増えています。国の教育ローンは親が借り入れますが、奨学金は学生が借り入れます。奨学金には利息の付かない第一種と利息の付く第二種がありますが、いずれも卒業後に返済しなければなりません。

国の教育ローンや奨学金を利用する状況ですので、収入が減ると返済が厳しくなると予想されます。

これまでの情報から、大学生とその親がおかれている状況をまとめると次のようになります。

・大学に通うために借り入れをしている家庭が増えている
・学費や生活費の一部は、学生のアルバイト代などに頼っている
・国の教育ローンは親の借り入れ、奨学金は学生本人の借り入れである
・親からの仕送り額だけでは不足している

このような状況にあることから、親が病気やケガで働けなくなった場合に備え、大学生協保険の「扶養者所得保障保険」や民間保険会社の就業不能保険を活用する方法が考えられます。

ただ扶養者所得保障保険、就業不能保険ともに学生本人が加入することはできず、扶養者である親(保護者)が加入することになります。そのため在学中の費用について、学生本人の収入の依存度が高すぎると、学生は保険に加入できないため、学生本人が働けなくなった場合のリスクは高くなります。一方、リスクの発生率を踏まえると、病気により働けなくなる可能性は親よりも低いため、就業不能保険は不要であると考えることもできます。

就業不能保険での保険金額は?適正額を考える

大学生協保険の「扶養者所得保障保険」だけでなく、就業不能保険も検討しておくことで、選択肢が増え、保険料の負担を軽減できるかもしれません。ここでは、就業不能保険でどの程度準備しておけばいいか考えていきます。

就業不能保険を子の大学入学直前に加入する場合、保険金額は設定しやすいでしょう。親がどこまで負担できるか、予定を立てやすいためです。保険金額を設定する基準を挙げてみます。

(1) 仕送り額分(月額10万円)
(2) 家賃+仕送り額分(月額20万円)
(3) 月額20万円+国の教育ローン返済分(月額2万円)

(1) 仕送り額分の月額10万円の保障が必要な場合

仕送り額分に限らず、働けなくなった場合に月額10万円の支出が難しくなるのであれば、その分を就業不能保険でカバーします。初年度納付金や前後期の授業料、家賃など仕送り額分以外は貯蓄額の取り崩しができるケースです。会社員や公務員であれば、働けなくなったとしても最長1年6ヶ月は健康保険から傷病手当金として、およそ給与の3分の2を受け取ることができます。

働けなくなった場合~(1)のケース~
・傷病手当金だけで当分の間、生活できる貯蓄がある
・学費の準備出来ている(学資保険で準備済など)
・家賃の心配がほとんどない。
・毎月10万円の支出だけが困難になると予想している

大学入学に向けて学資保険などで準備しており、緊急用資金として貯蓄も一定額ある場合は、在学中の支出のみ保障が必要となります。

(2) 家賃や仕送り額分など月額20万円の保障が必要な場合

(1)の状況よりも大学入学に向けた準備が遅れてしまった場合などで、在学中に月額20万円の支出を想定しているケースです。月額20万円のなかには、前後期の授業料支払いのための貯蓄分を含めても構いません。大学の授業料は大学や学部によって異なりますが、おおむね80~100万円を前後期の2回に分けて支払います。初年度納付金以外の授業料を準備していない場合は、働けなくなると支払えなくなりますので、この分も保険でカバーすることになります。

働けなくなった場合~(2)のケース~
・傷病手当金だけでは少し心もとない。
・学費の準備は出来ている(学資保険で準備済など)
・家賃の支払いも困難になる
・毎月20万円の支出が困難になると予想している

学資保険で、初年度納付金の準備はできているが、在学中の支出については準備できておらず、毎月20万円ほどの支出が必要で、その金額を就業不能保険で準備したい場合となります。

(3) 初年度納付金や在学中の費用が十分に準備できていない

初年度納付金が準備できていない場合、国の教育ローン等を利用する方法があります。初年度納付金のみの借り入れであれば100~150万円、4年間分の学費であれば文系の場合400万円前後かかります。ただ国の教育ローンの上限は学生1人つき350万円となっていますので、大学4年間でかかる全費用を借りることはできません。

仮に350万円を返済期間15年で借り入れるとすると、毎月の返済額は約2.2万円となります。国の教育ローンの返済と、毎月の家賃や生活費を合わせて25~30万円の支出を就業不能保険でカバーすると考えます。

働けなくなった場合~(3)のケース~
・傷病手当金だけでは不足している
・学費や在学中の家賃・生活費などの準備はほとんどできていない
・学費は国の教育ローンを利用する予定である
・ローンの返済と毎月20万円の支出が困難になると予想している

就業不能保険による保障金額が(1)や(2)のケースと比べ、最も高くなる状況と言えます。

就業不能保険の保険料を試算する

(1)~(3)の異なる状況を紹介しましたが、これらを参考に大学費用の準備状況によって、大きく月額10万円、20万円、30万円の保障が必要だとします。大学入学前に十分準備が出来ていれば、働けなくなった場合の保障は少なくて済みますが、ほとんど準備ができていない場合は保険金額を増やすしかありません。

ここで、アフラックの就業不能保険である「給与サポート保険」を例に、保険料を試算してみましょう。就業不能となってから1年6ヶ月は傷病手当金があるとして、必要金額の半分としています。

<給与サポート保険 保険料 50歳男性>

1回目~17回目 18回目~ 月額保険料
5万円 10万円 3,340円
10万円 20万円 6,680円
15万円 30万円 10,020円
20万円 40万円 13,360円

大学進学時に親が50歳だとした場合の保険料が上の表です。傷病手当金の最長支給期間である1年6ヶ月を過ぎた18回目からの保険金額を必要保障金額に合わせています。それまでの1~17回目は傷病手当金を充当しますが、自営業者等であれば、傷病手当金がありませんので、全期間、同じ保障額が必要となります。

大学資金の準備が出来ていれば、上段の保障金額10万円(17回目までは5万円)で月額保険料は3,340円となりますが、準備が十分でなければ保障金額30万円や40万円程度必要となり月額保険料は1万円以上となります。

保障金額が上がれば保険料は高くなりますが、病気やケガで働けなくなった場合には、子の学費や生活費分は保障されますので、万一のときにも安定して学業を続けることができます。またこの金額は家賃や仕送りが必要な場合ですので、自宅から通う場合の保障金額は少なくて済むでしょう。

就業不能保険の適切な保険金額を試算する

様々な観点から解説しましたので、安心して学業を続けるための就業不能保険の特徴についてまとめておきます。

・就業不能保険の保険金額
学費と大学在学中の生活費の準備が十分なほど保険金額は少なくて済む
自宅外生の場合、家賃などの支払い分も保険金額に含める必要がある

・就業不能保険の保険料
学費と大学在学中の生活費の準備が十分なほど保険料の負担は軽くなる
自宅外生の場合、保険金額が上がる分、保険料は高くなる

就業不能保険と在学中の支出との関係はこのようになりますが、実際には、死亡保障や医療保障など他の保険料の支出もあります。また就業不能になる可能性は、大学在学中だけではありませんので、就業不能保険に加入するとしても保険料と保障期間は家計の状況から判断しなければなりません。

あらゆるリスクを保険でカバーすると保険料の負担が大きくなりますので、就業不能保険を含めてどのような保険が必要かを検討してみてください。

  • この記事を書いた人

橋下 秀樹

CFP®、宅地建物取引士、証券外務員二種。これまで様々なお金に関する相談を通じ、家計への負担軽減のアドバイスを実施。ファイナンシャルプランナーとして講師も務める。ライフプランニング、住宅ローン、教育資金、退職後の生活資金、保険の見直しなど幅広い分野の執筆活動を行う。

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