がん保険

【FP監修】がんの5年生存率向上とがん保険の必要性について

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がんは、診断されると治療が長引いて治らないイメージがある怖い病気として世間では認知されています。一方でがんの生存率は年々上昇しており、不治の病というイメージは薄れつつあります。

しかしがんの生存率が向上したからといって、がん保険の必要性が低下したとはいえません。むしろ、がん保険がより必要な時代であるとも考えられるのです。

そこで今回は、がんの5年生存率からがん保険の必要性について考えていきます。

がんの生存率とは

がんの生存率とは、がんと診断された人が3年や5年経過した後に生存している人の割合で、がん治療を評価する指標の1つです。0〜100%で表され、数値が高いほど治療によって生命を救いやすく、低いほど治療が困難ながんであることを表しています。

がんの生存率は、治療度や進行度、治療法ごとに集計され、早期の発見や治療効果の評価に役立っています。

また、生存率は、がん以外の死亡影響を除いた「相対生存率」で表されるのが一般的です。測定される年数も、5年だけでなく3年のような短期間や10年のような長期間のものまであります。

日本におけるがんの5年生存率

まずは2020年2月時点における、がんの5年生存率を確認していきましょう。

診断年数 5年生存率(対前年)
2009〜2010年 66.1%(+0.3ポイント)
2010〜2011年 66.4%(+0.3ポイント)

※出典:国立がん研究センター「がん情報サービス

このように、生存率が少しずつ向上していることが分かります。国を挙げてがん治療に取り組み、死亡数が減少しているアメリカの5年生存率が69%であることを考えると、決して低い数値ではありません。

ちなみに3年生存率は、2012年にがんと診断された患者が72.1%で、2011年に診断された人と比較すると0.8ポイントも改善。また、2013年にがんと診断された人の生存率は72.4%と、0.3ポイント上昇しています。

ただし生存率は、がんの種類によって大きく異なります。例えば、前立腺がんの5年生存率は98.4%ですが、膵臓がんは7.9%と実に90%以上の差があるのです。

がんの5年生存率が向上している理由

がんの5年生存率が上昇した背景には、以下の2点が考えられます。

医療技術の進歩や治療環境の変化
検診の受診率向上による早期発見の増加

それぞれについて詳しく確認していきましょう。

医療技術の進歩や治療環境の変化

がん治療は、抗がん剤の進歩により、治療効果が高まっただけでなく、副作用も軽減されて患者が治療に苦しむことも少なくなってきています。働きながらがんを治療する人が増えました。

また、がんの治療においては、身体に負担のかかる治療ではなく、患者やその家族のQOLを重視した治療法が選択されるケースが増えました。例えば、患者や家族の精神的苦痛や身体的苦痛を和らげるための緩和ケア治療を行って、少しでも充実して生きられるような治療が行われています。

このように医療技術や治療環境が変化したことで、がんを治療しながら働く人や、身体に負担のかかる治療ではなく、より生を充実させた治療方法を選択する人の増加が、5年生存率に大きく影響していると考えられます。

検診の受診率向上による早期発見の増加

がん検診の受診率向上も生存率向上に関係しています。全体的に検診の受診率が上昇しています。

初期のがんでは自覚症状がない場合も多いため、検診を積極的に受診する人が増えたことで、早期の段階でがんを発見できるケースが増えて生存率が向上したと考えられます。

がんの治療法と医療費

それでは、現在においてがんの治療にはどのような種類があり、それぞれいくらの費用が発生するのでしょうか?1つずつ確認していきましょう。

なお、ここでご紹介している治療費は、あくまで目安です。実際の治療費はがんの種類や進行度合などによって大きく異なります。

内視鏡治療

内視鏡治療は、早期がんの治療で用いられることの多い治療法です。例えば胃がんの場合、リンパ節への転移がないIA期で行われます。開腹手術と比較して負担が小さいため、体の機能を温存し術後のQOLを保つ効果が期待できます。

内視鏡治療では、治療の前後で数日間の入院が必要なケースがあるため、治療費に加えて数日間の入院費用が必要です。例えば、特殊な電気メスを使って粘膜下をはぎ取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)でかかる費用の目安は以下の通りです。

治療費:195,000円(3割負担:58,500円)
入院費(7日間):460,000円(3割負担:138,000円)
※出典:国立がん研究センターのがんとお金の本
※入院費には治療費が含まれる

手術

手術とは、がんが進行している部位を外科的に取り除く治療法のことです。がん細胞が存在する部位の一部もしくは全部を切り取ることで、完治や症状の改善が期待できるような早期のがんで行われます。

内視鏡手術に比べて大掛かりな治療となるため、治療費も高額になるだけでなく、手術前後の入院も長くなり自己負担額が高額になる可能性があります。

例えば、胃の一部を切除する幽門側胃切除術の場合、治療費や入院費の目安は以下の通りです。

治療費:750,000円(3割負担:225,000円)
入院費(7日間):1,450,000円(3割負担:435,000円)
※出典:国立がん研究センターのがんとお金の本
※入院費には治療費が含まれる

ただし、手術にかかる費用や入院日数は、がんの進行度や行う手術の内容によって大きく異なります。

放射線治療

放射線治療とは、体の外から高エネルギーのX線を照射してがんを小さくする治療法です。がんに局所的に行われる治療のため、他のがんと比較すると患者の身体にかかる負担が少ないといわれています。

放射線治療は、がんの根治的な治療なけでなく痛みの緩和や再発・転移の防止などさまざまな目的で行われるため、治療回数や治療期間、費用は、がんの状態や治療目的によって大きく異なります。

仮に、肺がんの根治的治療で放射線治療が行われる場合、週に5日の照射を5〜6週間にわたって行う場合の費用の目安は以下の通りです。

治療費:430,000円(3割負担:129,000円)
入院費(7日間):1,510,000円(3割負担:453,000円)
※出典:国立がん研究センターのがんとお金の本
※入院費には治療費が含まれる

抗がん剤治療

抗がん剤治療とは、抗がん剤を投与し、がんの進行を抑えたり遅らせたりする治療法です。放射線治療と併用して行われる場合もあります。

投与の期間や種類、費用はがんの状況によって大きく異なります。特に抗がん剤の費用については、健康保険対象外で全額自己負担のものもあるため注意が必要です。

一方で抗がん剤は、がん細胞と同時に正常な細胞も攻撃してしまいます。そのため、貧血や脱毛といった副作用が現れる点に注意が必要です。

抗がん剤の費用は、期間が長いほど自己負担も高額になります。例えば肺がんでⅣ期の場合、化学療法と定期検査(外来17回、3週間1サイクル)を行うと3割負担で2,100,000円になることもあるのです。※出典:国立がん研究センターのがんとお金の本

先進医療

がんにおける先進医療には、陽子線治療や重粒子線治療がありますが、健康保険の対象外です。そのため、200〜300万円ほどの高額な技術費用の全額が自己負担となります。

がん保険の必要性について

確かに5年生存率は年々改善されていますが、がん治療にお金が掛からなくなったわけではないため、がん保険の必要性が低下したとはいえないでしょう。

特に生存率は、完治率ではないため、がんが再発した人や治療を継続している人も多く含まれています。5年や10年など長期間にわたってがんの治療が必要なケースも考えられるでしょう。

以下のようにがんの入院日数は減少している一方で、外来患者数は増加傾向にあります。

平均入院日数(日) がんの外来受療率(人口10万対)
2008年 23.9 123
2011年 20.6 130
2014年 19.9 135
2017年 17.1 145

※出典:厚生労働省「患者調査の概況

がん治療においては、退院後も通院をしながら放射線治療や抗がん剤治療をするケースが増えていることから外来の受療率が高まっていると考えられます。

通院期間が長期に渡った場合、高額療養費制度※1利用し多数回該当※2となっても治療費の自己負担が膨れ上がります。また、先進医療や未承認の新薬を用いた自由診療など、健康保険適用外の治療は全額自己負担です。

生存率が上昇した一方で長期にわたってがんと付き合っていくケースもあります。むしろがん保険や医療保険のような給付金を受け取れる保障の必要性は、むしろ高まっているとも考えられるでしょう。

※高額療養費制度とは、医療費の3割負担が個人の収入によって決められた上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度
※多数回該当とは過去12ヶ月以内に高額療養費制度を3回利用すると4回目から自己負担の上限がさらに引き下げられる制度

がん保険は長期の通院治療に対応

2020年時点のがん保険は、長期間にわたるがん治療に対する保障が増えています。

例えば、がんと診断された場合に50万円や100万円のようにまとまった給付金を受け取れる診断給付金は、がんが再発した場合でも複数回受け取れるケースが多くなりました。

また、所定の放射線治療や抗がん剤治療のような専門治療を受けた場合に、まとまった給付金を受け取れる保障や、退院後の通院日数に応じた給付金を受け取れる保障を付帯できる商品も増加しています。

がん保険も時代や医療環境に適応し長期間にわたるがん治療をカバーする保障内容に変化しているため、加入することで金銭面での不安を大きく緩和できる可能性があります。

まとめ

がんの5年生存率は向上しましたが、がん保険の必要性が低下したとは考えにくいでしょう。むしろ、がんを通院によって長期間治療するケースも増えているため、がん保険の必要性は高まっているとも考えられます。

ただし、がん保険が必須なわけではありません。ご自身の生活背景や経済状況に照らし合わせたうえで、慎重に必要性を検討しましょう。判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナーや保険の専門家の意見を参考にするのも一つの方法です。

  • この記事を書いた人
品木 彰

品木 彰

ファイナンシャルプランナー、FP技能士2級、保険・金融ライター。国公立大学卒業後、明治安田生命保険相互会社に新卒入社。法人営業として官公庁向けの団体保険・個人営業を担当。チームリーダーや管理職候補など7年半勤務。その後、人材会社に転じ多くの転職をサポート。現在は、保険、税金、貯蓄術、不動産など幅広いジャンルの記事を執筆するファイナンシャルプランナー。

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