個人年金保険の選び方・見直し方

個人年金保険

「ゆとりある老後の資金を準備する」個人年金保険

個人年金保険の
選び方・見直し方 select / revise

目次

監修者プロフィール

吹田 朝子(すいた ともこ)

吹田 朝子

(すいた ともこ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士、
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

ぜにわらい協会会長 一般社団法人円流塾 代表理事。人とお金の理想的な関係を追究するお金のメンタリスト®。1989年一橋大学卒業後、金融機関にて企画調査・主計部門を経て1994年より独立。
顧客相談3300世帯以上。TV出演・新聞連載など多数。結婚・妊娠・出産・子育てや転職・住宅購入、そして親の介護など、様々な人生イベントを含み、夫婦の稼ぎ方からお金の使い方、受け取り方、増やし方、そして家族のために次世代まで幸せが続くお金の使い道を設計することを生業としている。著書に「お金の流れをきれいにすれば100年人生は楽しめる!」(スタンダーズ社)、「お金オンチの私が株式投資を楽しめるようになった理由」(C&R研究所)など多数。

長尾 義弘(ながお よしひろ)

長尾 義弘

(ながお よしひろ)

ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員、辛口保険評論家

NEO企画代表。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。
著書に「コワ~い保険の話」(宝島社)、「こんな保険には入るな!」(廣済堂出版)「商品名で明かす今いちばん得する保険選び」「お金に困らなくなる黄金の法則」「保険払いすぎ見直しBOOK」「最新版 保険はこの5つから選びなさい」「老後資金は貯めるな!」(河出書房新社)、「保険ぎらいは本当は正しい」(SBクリエイティブ)。共著に「金持ち定年、貧乏定年」(実務教育出版)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ「よい保険・悪い保険」など多数。

1. 新規に定期保険を検討している場合

(1)公的年金制度(国民年金と厚生年金)と生活必要額について

まずは、老後の生活資金が一体いくら必要なのでしょうか?
そして、老後のために準備しておく資金の必要性・必要額から見ていきましょう。

金融広報中央委員会が平成29年に行ったアンケートによると、老後に必要な生活費の予想額がひと月当たり約27万円となっております。これは全世代の平均額であり、60代・70代のいわゆるシニア世代は、ひと月当たりの生活費は最低28万円は必要と回答しています。
また、総務省の家計調査によると、シニア世代を含む2人以上の世帯の1ヶ月の平均支出は約25万円という結果が出ています。この金額には住居費は含まれていないため、家賃やマンションの管理費などは、別途考慮する必要があります。

  国民年金 厚生年金
  第1号被保険者 第3号被保険者 第2号被保険者
国民年金の
被保険者の種類
  • 自営業者とその世帯の専業主婦、学生など
  • 20歳以上60歳未満の国内在住者
<例>
個人商店 経営者 フリーランス
※第2号被保険者の世帯で扶養される20歳以上の学生も!
  • 第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者
<例>
会社員に扶養される専業主婦(夫)
※扶養控除内で働く主婦(夫)も!
  • 会社員、公務員、教員など
<例>
会社員
※国民年金も同時に加入
老後に受け取る
年金の種類
老齢基礎年金 老齢基礎年金
+ 老齢厚生年金
年金を受け取る条件 10年以上の受給資格期間 老齢基礎年金の受給資格(10年以上)+厚生年金加入1ヶ月以上
保険料の金額 全員一律で同じ金額
2018年度 月16,340円
2019年度 月16,410円
免除・後納制度あり
0円 月給・賞与額の9.15%
勤務先が同額負担
国民年金の保険料含む
※公務員は2019年8月まで8.993%、以降9.15%
※私学教員は上記と保険料が異なる
受取開始の年齢 原則65歳から一生涯(死亡するまで)
60歳から繰り上げ
70歳まで繰り下げ
も可能
  一部の年齢・生年月日に応じて段階的に61歳から65歳へと引き上げられている
その他 任意加入
付加年金
国民年金基金で年金額を増やすことも可能
加給年金(配偶者や子どもなどの条件あり)

老後の生活費の基本となるのは公的年金です。公的年金には、自営業者などが加入する国民年金と、主に会社員が加入する厚生年金があります。
日本の年金制度は、3階建てに例えられることがありますが、国民年金は誰もが加入する必然性がある1階部分、2階部分として厚生年金、3階部分として確定拠出年金などと考えることが出来ます。

生涯自営業で一度も会社勤めが無い方は、国民年金からのみ、年金を受け取ることが出来ます。40年間に渡って満額の保険料を納めた方は、月額にして約6万5千円受け取ることが出来ます(2019年4月時点の法制度より)。
一方、厚生年金では、働いていた現役時代の給与の額によって、実際の受取額が変わって来ます。厚生労働省が示すモデルケース(平均的な収入で、40年間就業し配偶者が全期間無職であった家庭)では、国民年金・厚生年金から支給される年金の合計額は、月額にして約22万円となっています。

上記で触れたように、老後に必要な生活費として、アンケート調査上は月額27万円ほどというデータがあります。しかし、平均的なサラリーマンが受け取ることが出来る公的年金は、現状では約22万円です。
この計算から考えると、5万円の不足が出てしまいます。その不足部分を公的年金以外で準備する必要があるとすれば、65歳まで働いたとして、5万円×12か月×65歳から平均寿命までの年数が、老後のために準備しておく資金の目安ということになります。
この老後の必要資金を準備するために、個人年金保険は非常にわかりやすい対策です。

老齢基礎年金とは?

老齢基礎年金の支給要件
保険料納付済期間と保険料免除期間(合算対象期間)の合計が10年以上であり65歳になったとき

支給開始年齢
原則として65歳
ただし、60歳から減額された年金の繰上げ支給や、66歳から70歳までの希望する年齢から増額された年金の繰下げ支給を請求できます。

・年金年額(平成31年4月分から)
20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を支払った人は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。
保険料全額免除された期間の年金額は1/2(平成21年3月分までは1/3)となりますが、保険料の未納期間は年金額の計算の対象期間とはなりません。

2019年(平成31年・令和1年)4月分からの年金年額 780,100円(満額)

そしてこの満額に対して、実際の保険料納付済月数や、全額免除月数等を次の式のように反映していくと実際の支給額を計算することができます。

老齢基礎年金の計算式

・全部繰上げ
全部繰上げを請求した方は下記の減額率によって計算された年金額が減額されます。

減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数

請求時の年齢 請求月から65歳になる月
の前月までの月数
新減額率
60歳0ヵ月~60歳11ヵ月 60ヵ月~49ヵ月 30.0%~24.5%
61歳0ヵ月~61歳11ヵ月 48ヵ月~37ヵ月 24.0%~18.5%
62歳0ヵ月~62歳11ヵ月 36ヵ月~25ヵ月 18.0%~12.5%
63歳0ヵ月~63歳11ヵ月 24ヵ月~13ヵ月 12.0%~ 6.5%
64歳0ヵ月~64歳11ヵ月 12ヵ月~ 1ヵ月 6.0%~ 0.5%

・一部繰上げ
昭和16年4月2日から昭和24年4月1日(女子は昭和21年4月2日 から昭和29年4月1日)生まれの人は、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が段階的に引き上がることから、この支給開始年齢に到達する前に希望すれば一部繰上げ支給の老齢基礎年金を受けることができます。
一部繰上げを請求した方は、下記により、年金額は計算されます。

老齢基礎年金の計算式

☆ 特例支給開始年齢とは、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢です。

65歳からは老齢基礎年金の加算額が加算されます。

老齢基礎年金の計算式

繰下げ請求と増額率

請求時の年齢 増額率
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 108.4%~116.1%
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 116.8%~124.5%
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 125.2%~132.9%
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 133.6%~141.3%
70歳0ヵ月~ 142%
  • (注)繰下げの請求を行う月によって増額率は異なり、65歳になった月から繰下げの申出を行った月の前日までの月数に応じて1ヵ月増すごとに0.7%ずつ高くなります。(2019年4月現在)

・支給要件
老齢基礎年金の支給要件(保険料納付済期間と保険料免除期間(合算対象期間)の合計が10年以上であり65歳になったとき)を満たしていること

厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上あること
※65歳未満の方に支給する老齢厚生年金については、1年以上の被保険者期間が必要

・支給開始年齢
原則として65歳から
男性は昭和36年4月2日以後に生まれた方、女性は昭和41年4月2日以後に生まれた方

・年金額(平成31年4月分から)
65歳未満

定額部分①+報酬比例部分②+加給年金額③

①定額部分

老齢基礎年金の計算式
  • ※1生年月日に応じた率(定額単価)についてはこちら
  • ※2昭和9年4月2日~昭和19年4月1日生まれは444月、昭和19年4月2日~昭和20年4月1日生まれは456月、昭和20年4月2日~昭和21年4月1日生まれは468月、昭和21年4月2日以後生まれは480月を上限とする。
    なお、定額部分は上限の被保険者期間を超えた場合、上限の被保険者期間で計算することになるが、報酬比例部分は上限の定めがないので加入された被保険者期間に応じて年金額は計算される。
    また、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降180月以上ある方については、240月未満であっても240月として計算する

②報酬比例部分

報酬比例部分の年金年額は、Aの式によって算出した額となります。
なお、Aの式によって算出した額がBの式によって算出した額を下回る場合には、Bの式によって算出した額が報酬比例部分の年金年額になります。

A 報酬比例部分の年金額(本来水準)

報酬比例部分の年金額

B 報酬比例部分の年金額(従前額保障)

(従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金年額を計算したもの)

報酬比例部分の年金額

平均標準報酬月額とは、平成15年3月までの被保険者期間の各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額です。

平均標準報酬額とは、平成15年4月以後の被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額です。
これらの計算にあたり、過去の標準報酬月額と標準賞与額には、最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じます。

※再評価率・生年月日に応じた率(報酬比例部分の乗率)

③加給年金額(定額部分が支給されている場合に限る)
厚生年金保険の被保険者期間が20年※以上ある方が、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)で、その方に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます。

65歳到達後(または定額部分支給開始年齢に到達した後)、被保険者期間が20年※以上となった場合は、退職改定時に生計を維持されている下記の配偶者または子がいるときに加算されます。

加給年金額加算のためには、届出が必要です。

  • ※中高齢の資格期間の短縮の特例を受ける方は、厚生年金保険(一般)の被保険者期間が15~19年
対象者 加給年金額 年齢制限
配偶者 224,500円 65歳未満であること(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者は年齢制限なし)
1人目・2人目の子 各224,500円 18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子 各74,800円 18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
  • ※老齢厚生年金を受けている方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~165,600円が特別加算
受給権者の生年月日 特別加算額 加給年金額の合計額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 33,200円 257,700円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 66,200円 290,700円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 99,400円 323,900円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 132,500円 357,000円
昭和18年4月2日以後 165,600円 390,100円
  • (2019年4月現在)
※【注意】
配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止。

老齢基礎年金の一部繰上げをしている方
老齢基礎年金の一部繰上げを希望した方は、老齢厚生年金の報酬比例部分に加え、定額部分が繰上げ調整額として支給されます。

繰り上げ調整額
  • ※特例支給開始年齢とは、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢

老齢基礎年金の全部繰上げをしている方
昭和16年4月2日から昭和24年4月1日(女子は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日)生まれの人は、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢に達したときから、老齢厚生年金の報酬比例部分に加え、経過的加算が支給されます。

  • 経過的加算…定額部分から基礎年金相当部分(厚生年金保険の被保険者期間にかかる老齢基礎年金の年金額)を差し引いた額

(65歳以上)

報酬比例年金額(イ) + 経過的加算(ロ) + 加給年金額(ハ)

(イ)報酬比例年金額 60歳~64歳の報酬比例部分(2)と同じ。

(ロ) 経過的加算は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の額から厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の期間の老齢基礎年金相当額を算出し、定額部分から差し引いたものです。

経過的加算額の計算式

経過的加算額の計算式
  • ※1、2については、65歳未満の厚生年金保険(老齢厚生年金)の(1)定額部分の項目を参照ください。
  • ※ 昭和36年4月以前や20歳前、60歳以降の厚生年金保険の被保険者期間については、定額部分の被保険者期間の上限に達していなければ、経過的加算部分に反映することになります。
  • 老齢厚生年金(報酬比例部分)には、被保険者期間の上限がないので全期間が反映します。

(ハ)加給年金額 60歳~64歳の加給年金額(3)と同じ。

在職者の老齢厚生年金(在職老齢年金)在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)を受給されている方の年金額は、受給されている老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額により、年金額が調整されます。2019年4月現在、60歳から65歳未満と、65歳から70歳未満の方では、在職老齢年金の計算方法が異なっています。
また、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、65歳以上の方と同様の在職中による支給停止が行われます。

(2)選び方のポイントとは?

個人年金保険に加入する年齢ですが、年齢が上がるにつれて加入の必要性は高まります。理由としては、老後が近づくにつれ、老後の備えとして力を発揮してくれる保険を優先的に選ぶ必要性があるからです。一方で若い方は、30年から40年にわたる長期契約になります。家族の状況・子どもの有無など、今後のライフプランなどが見えてきて、自分の将来を長期的に考えられるようになる頃から、個人年金を検討するのがよいでしょう。

保険料の支払い方は、大きく一時払い・年払い・月払いに分けることが出来ます。ほとんどの方が月払いを選択されていますが、資金に余裕がある方は、一時払いや年払いのように、まとめて保険料を支払うと合計の保険料も安くなります。また、給付される年金額に対する支払った保険料の総額の比率である返戻率も高いことに越したことはありません。返戻率が全てだとは言い切れませんが、最重要ポイントであることは、間違いないでしょう。見積もりサイトなどを利用して、複数の商品を比較検討して、コスパの良い商品を見付け出しましょう。

2. 見直しの場合

個人年金保険の見直しの際にも、年金受取の効率を高めるために一番注目すべきポイントは、返戻率です。返戻率とは、支払った保険料に対して、受け取ることが出来る年金の割合のことです。

返戻率=年金受取総額÷払込保険料総額×100

個人年金保険は、お金を貯めて増やすことを目的とした商品です。そのため、お金をどう増やしていくかが最大のポイントになります。お金の増え方に直結する返戻率が大事になってきます。

既に個人年金に加入している方の見直しポイントは、保険料をできるだけ一括払い(一時払い・全期前納払い)する前提で検討していくということです。

個人年金保険は、若いうちに加入して、長い期間保険料を支払った方が返戻率は良くなります。しかし、現在加入している個人年金保険の返戻率が悪い場合には、個人年金保険を乗り換えることも有効な策と言えます。ただし、その場合、払込が終わるまでの期間が短くなってしまうために、返戻率が低くなってしまう場合があるのです。

個人年金保険の中途加入で返戻率が低くなってしまう理由は、保険料を保険会社に預けておく期間が短くなってしまうからです。保険会社は預かった保険料を、運用して利益を出し、運用益を年金に上乗せして支払っています。そのため、保険料を一時払いで支払ってしまい、保険料全額を預けておく期間を長くすることで、保険会社が保険料を運用する期間を延ばすことが出来るのです。このことによって、結果的に保険料の運用益が増え、返戻率が高くなることに繋がります。

保険を解約する際には、事前に解約返戻金の額を確認しておきましょう。解約のタイミングによっては、払い込んだ保険料総額よりも解約返戻金の額が少なくなってしまうこともあるからです。ある程度の年数が経過していれば、解約返戻金の額が、保険料払込総額より多くなっていることも多いのですが、慌てて行動して損をすることのないように、あらかじめ保険会社に解約返戻金の額を問い合わせしてから判断しましょう。加入している保険会社に問い合わせをすれば、問い合わせ時点での解約返戻金の額を教えてくれます。解約などのアクションは、やり直しがきないので、事前にしっかりと情報を得て比べる時間をとることをお勧めします。